【取り返しがつかない】40代で急激に失う筋肉を守るためにピラティスをやるべき3つの理由

皆さんはこのように感じることはありませんか。

普段の仕事で疲れやすくなってきた。

最近躓くことが増えてきた。足腰が弱ってきたのかな。

一般的に30歳前後が最も筋肉量が多く、40代になると年0.5〜1%の割合で直線的に筋肉量が減少すると言われています。40代を迎える読者の皆様の中にも、「普段の仕事で疲れやすくなってきた。」「最近なんだか足を躓くことが増えてきた気がする。」このように感じる方もいらっしゃるかもしれません。

40代以降、筋肉量が減少し続けると将来的に「転倒・骨折リスクの上昇」「寝たきり・要介護状態への移行」という深刻な問題に直結します。基礎代謝が低下して脂肪が落ちにくくなるだけでなく、心筋梗塞・脳卒中といった疾患リスクも増大します。

加齢による筋肉減少を食い止めるには、筋力トレーニングが有効と言われています。その中でも、40代女性が無理なく続けやすいのがピラティスです。

そこでこの記事では、40代になり体の衰えを感じ始めた女性に向けて、40代で急激に筋肉量が減少するメカニズムやピラティスを始めるべき3つの理由を解説します。この記事を読むことで、体の衰えに対しピラティスがどのように効くのか、科学的根拠つきで理解できます。

健康寿命を伸ばして、人生を全力で楽しみたい方はぜひ最後までお読みください。

目次

40代で急速に進む筋肉量減少のメカニズム

皆さんは、「最近つまづきやすくなってきたな」「階段が疲れやすくなってきた」このように感じることはありませんか。それはもしかすると、筋肉量の減少が影響しているかもしれません。筋肉量減少のメカニズムを説明する前に、“そもそも筋肉はどのような構造で成り立っているのか”について触れていきます。

筋肉は、①筋肉→②筋束→③筋線維→④筋原線維の順で構成されています。ここで着目したいのは“筋原線維”です。筋原繊維1本1本がより太く、本数が多いほど、筋肉は大きくなり力強いパワーを発揮しやすくなります。

筋原線維の太さと密度(本数)が低下する理由には、以下の3つがあると言われています。

【筋原線維の太さと密度(本数)が低下する3つの理由】

①加齢による影響
②神経‐筋結合変性の影響
③ホルモン・たんぱく質合成低下の影響

40代を迎えると体には、加齢や神経‐筋結合の変性、ホルモン・タンパク質合成機能の低下といった様々な側面から筋肉量が低下しやすくなります。“40代はある種の節目”だということを自覚するべきです。

私も現在30代ですが、40代を迎えることを想定して影響を最小限に食い止めなくてはなりません。ピラティスを行う理由を腹落ちさせておくことは、運動を習慣化するためにも大切です。ぜひ以降の章も読み進めてみてください。

理由1|加齢による影響

まずは、加齢による影響について解説します。

40代になると、筋原線維の太さと密度(本数)が減少し始めると言われており、大きな力を入れて物を運ぶといった動作が徐々に難しくなっていきます。※1)また、typeⅡ線維(速筋線維)が優位に減少し始める※2)と研究により報告されています。

素早く階段を登ったり、重い荷物を持ち上げたりするときには、このtypeⅡ線維(速筋線維)が動員されますが、加齢による影響で徐々にこのような動きが困難となります。みなさんも思い当たるところがあるのではないでしょうか。

40歳を超えると、普通に生活しているだけでも年間に5〜10%ずつ筋原線維が減少してしまうため、加齢による影響はみなさんが想像している以上に深刻です。

理由2|加齢で“筋肉へのスイッチ”が切れかかるメカニズム

次に起こるのは、「筋肉へのスイッチが切れかかる」現象です。

神経と筋肉をつなぐ接合部(スイッチ)が年齢で傷み、脳からの電気信号が筋肉まで届きにくくなるため、筋肉を思いどおりに動かせなくなります。※3)スイッチ数の減少はシンプルに、筋肉に“動け”と命令するスイッチの数自体が少なくなること※4)を表しています。

伝達速度(スイッチの反応スピード)の低下も生じます。通常、脳神経から筋肉へ情報を伝えるには、神経の先端に入ったカルシウムが “アセチルコリン” という合図を出します。その合図が筋肉を動かすためのドア(チャネル)を開け、ナトリウムが入ることで、筋肉に『動け!』という電気信号が送られます。この一連の伝達スピードが低下しまうのです。※5)

これらの影響により、神経と筋肉の接続が弱くなるため筋肉量の減少を加速させてしまいます。

ホルモン・たんぱく質合成機能の低下

〈上段:若年期のホルモン・タンパク質合成機能の低下〉
30代までは、テストステロンやIGF-1といった筋肉合成を促すホルモンが十分に分泌されています。そして、タンパク質を合成する能力もしっかり働きます。これらのホルモンやタンパク質合成能力が「筋肉のメンテナンスを行う工場」に燃料として送り込まれ、積極的な筋繊維の修復や新生を促します。※1,6,7)

〈下段:加齢期のホルモン・タンパク質合成機能の低下〉
40代以降になると、テストステロンやIGF-1といった筋肉合成を促すホルモンが十分に分泌されなくなります。タンパク質を合成する能力も低下し、「筋肉のメンテナンスを行う工場」に送られる“筋肉を修復・新生するための燃料”が減少します。これにより、筋繊維の修復・新生が追いつかなくなり筋肉量が徐々に減少してしまいます。

ここまで筋原線維の太さと密度が低下する3つの理由について確認してきました。40代を迎えると、上記3つの理由により筋肉量の減少に歯止めが効かなくなってしまいます。以降の章では、ピラティスを行うことで得られる3つのメリットを解説いたします。

ピラティスをやるべき3つの理由

握力が驚異的に強化!ピラティスで“開かないフタ”とサヨナラ

あなたは「調味料の蓋が開かなくて困る…」そのような経験はありませんか?ピラティスには握力を向上させるという研究結果が出ています。※8)また、握力は“身体機能・健康状態のバロメーター”とも言われており、AWGS 2019によると、握力低下の基準として「女性では18kg未満、男性では28kg未満」※9)と定義されています。

「López-Bueno R et al. Ageing Res Rev. 2022」の研究においても、

握力の低下と全死亡リスク、がん死亡リスク、および心血管疾患死亡リスクの上昇との間には、強い関連があることを示す強力なエビデンスがある。※10)

と報告されています。非常に恐ろしいですね。ただ単に握力向上により日常生活の些細な悩みが改善するだけでなく、握力向上を目指すことで、死亡リスク・がん死亡リスク・心血管死亡リスクを軽減させる効果があるんです。その点も意識しておくと、日々のセルフケアの動機づけになるのではないでしょうか。

ピラティスは握力を向上させるという報告があります。ぜひ、あなたの日常にピラティスを取り入れてみてください。

ピラティスで下肢筋力&バランス強化|転倒リスクを軽減するエビデンス

あなたは「最近、階段が疲れやすくなってきた」「バスや電車でふらつきやすくなってきた」 そのように感じることはありませんか。ピラティスには下肢筋力やバランスを強化し、転倒リスクを減らす効果があると言われています。

Kao Y-H, et al.(2015)の研究によると、12週間のピラティスで下肢筋力(膝伸展筋力)が向上した※11)というデータがあり、Fernández-Rodríguez R, et al.(2021)の研究においても、バランス改善や筋力強化のほか、転倒リスク因子の大幅低減にも効果がある※12)と報告されています。Bird, Hill & Fell(2012)の研究でも、ピラティス後の静的バランス・動的バランスともに有意な改善が認められた※13)と研究で明らかになりました。

これらを日常生活で当てはめていくと、階段の上り下りが楽になったり、床から立ち上がることが楽に行えるようになったりします。そして、バスや電車で不意に大きく揺れたりしても転びにくくなる。そのような効果も期待できます。

転倒には“骨折のリスク”がつきまといますから、転ばないように自身の体をコントロールできるようになるのは非常に有り難いですね。ピラティスには下肢筋力を強くしたり、バランス力を強化し転倒リスクを大幅に軽減できる効果があります。「ふらつきやすいな。」「転びやすいな。」と感じる方はぜひピラティスを取り入れてみてください。

一日中アクティブに過ごす秘訣|Pilatesが育む最強の筋持久力

あなたは「子どもの抱っこが辛い。」「1日通して体を動かすとぐったり。」そのように感じたことはありませんか。ピラティスには“筋持久力を高めて疲れにくい体を作る”という効果があります。私も、2児の父親をしていますが、「子どもの体力ってすごいな。まだまだ負けていられないな。」と感じることがあります。

Kloubec JA (2010)の研究によると、ピラティスを行うことで“腹筋と上肢の筋持久力の向上”が可能 ※14)と言われており、García-Garro PA et al.(2020)の研究でも、“下肢筋力の持久力の向上が期待できる”と報告されています。このように、ピラティスは全身の筋持久力向上が期待できるエクササイズであることが示されているわけです。

子どもと一緒に遊んだり、遠出して一日中遊んだり。ピラティスは、あなたのお子さんとの大切な思い出作りに華を添えてくれます。もちろん、ご友人と旅行に行くのだってなんのその。ピラティスを定期的に行うことは、あなたの人生をより良いものにしてくれるでしょう。

まとめ

40代になると筋肉量は直線的に低下していきます。筋肉量の減少は、加齢の影響や神経-筋肉間のつながりが弱くなること、ホルモン・たんぱく質合成の機能低下といった様々な要因が、相互に関連しながら進行していきます。特に、40代以降は運動不足も相まって、筋肉量の減少が顕著になります。

ピラティスを行うメリットとして、

  • 握力改善による全死亡リスク、がん死亡リスク、心血管疾患死亡リスクの低下
  • 下肢筋力とバランス力を改善し転倒リスクが軽減する
  • 筋持久力を強化し1日をアクティブに過ごすことができる

このような効果を得ることができます。

あなたの生活にもピラティスを取り入れ、筋肉量を増やし、健康寿命を高めて最高の人生を送るきっかけにしていただけたら嬉しく思います。最後までご覧頂きありがとうございました。

【参考文献】
※1)Mitchell WK, Atherton P, Smith K, et al. Sarcopenia, dynapenia, and the impact of advancing age on human skeletal muscle size and strength: a quantitative review. Ageing Research Reviews. 2012;12(4):349–364.


※2)Lexell J, Taylor CC, Sjöström M. What is the cause of the ageing atrophy? Total number, size and proportion of different fiber types studied in whole vastus lateralis muscle from 15- to 83-year-old men. J Neurol Sci. 1988 Apr;84(2-3):275–294.


※3)Deschenes MW, Roby MA, Semmler JG. Age-associated alterations of neuromuscular junction. Journal of Neuroscience. 2010;30(20):753–762.

※4)Dalton BH, Power GA, Rice CL. Age-dependent motor unit remodelling in human limb muscles. Journal of Physiology. 2015;593(1):175–187.

※5)Doherty TJ, Vandervoort AA, Brown WF. Age-related changes in nerve conduction velocity. Muscle & Nerve. 2003;27(3):236–241.

※6)Bhasin S, Storer TW, Berman N, Callegari C, et al. Effects of testosterone supplementation on sarcopenic components in older men: a randomized, placebo-controlled trial. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2001;86(8):2647–2655.

※7)Wright C, Wilson R, Blackburn J, Turner S, et al. Effects of a high-protein diet including whole eggs on muscle composition and indices of cardiometabolic health and systemic inflammation in older adults with overweight or obesity: a randomized controlled trial. The American Journal of Clinical Nutrition. 2018;108(5):1026–1033.

※8)Aibar-Almazán A, Martínez-Amat A, Cruz-Díaz D, et al. The effect of a Pilates exercise program on body composition, muscle strength, and gait speed in community-dwelling older women: a randomized controlled trial. J Strength Cond Res. 2022;36(8):2298–2305.

※9)Chen LK, Woo J, Assantachai P, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300–307.e2. doi:10.1016/j.jamda.2019.12.012.

※10)López-Bueno R, Andersen LL, Koyanagi A, Núñez-Cortés R, Calatayud J, Casaña J, Del Pozo Cruz B, et al. Thresholds of handgrip strength for all-cause, cancer, and cardiovascular mortality: A systematic review with dose-response meta-analysis. Ageing Res Rev. 2022;82:101778. doi:10.1016/j.arr.2022.101778.

※11)Yu-Hsiu Kao, Tsan-Hon Liou, Yi-Ching Huang, Ya-Wen Tsai, Kuo-Ming Wang.
Effects of a 12-week Pilates course on lower limb muscle strength and trunk flexibility in women living in the community: a randomized controlled trial. Health Care Women Int. 2015 Mar 4;36(3):303–319.

※12)Larissa Donatoni da Silva, Agnes Shiel, Caroline McIntosh.Pilates Reducing Falls Risk Factors in Healthy Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front. Med. (Lausanne) 2021 Sep 1;8:708883.

※13)Marie‐Louise Bird, Keith D. Hill, James W. Fell.A randomized controlled study investigating static and dynamic balance in older adults after training with Pilates.Arch Phys Med Rehabil. 2012 Jan;93(1):43–49.

※14)June A. Kloubec. Pilates for improvement of muscle endurance, flexibility, balance, and posture. J Strength Cond Res. 2010;24(3):661–667.

※15)Patricia Alexandra García-Garro et al. Effectiveness of A Pilates Training Program on Cognitive and Functional Abilities in Postmenopausal Women. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(10):3580.

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