皆さんはこのように感じたことはありませんか?

産後しばらく経っても、体型が戻らない。



骨盤底筋の具体的なトレーニング方法が知りたい…
そのようなお悩みの声を、女性の方からいただくことがあります。特に産後の場合、骨盤底筋の機能が低下しやすく、意識的にトレーニングしないと筋力も戻らないと言われています。具体的なアプローチ方法が分からず、そのまま放置してしまうケースも少なくありません。
私自身、総合病院や整形外科クリニックに勤務して10年以上になりますが、産後特有の体型の変化に悩む方や産後に生じた腰痛に悩む女性と数多く出会い、骨盤底筋へのアプローチを行うことで痛みや姿勢改善に至った経験を数多くしてきました。
そこでこの記事では、“骨盤底筋の基礎知識や具体的なエクササイズ方法」に至るまで、網羅的に詳しく解説致します。カラダの専門家として10年以上の知識と最新の知見をこの記事に凝縮しました。骨盤底筋を整えて体型を整えたい方はぜひ最後までお読みください。
そもそも、骨盤底筋って何?


骨盤底筋とは、骨盤の底でハンモック状に横たわり、内臓や骨盤内臓器を下から支える筋肉群のことです。具体的には、恥骨の内側から尾骨にかけて3層構造をとり、次のような大切な役割を担っています。
- 骨盤内臓器を“下支え”する
- 排泄のコントロール
- 腹腔内圧(IAP)を高める
上記の内容について詳しく解説していきます。


骨盤底筋は、恥骨から尾骨にかけてハンモック状に横たわる筋肉で、膀胱や子宮、直腸といった臓器を“下支え”する役割があります。骨盤底筋は「遅筋線維70%:速筋線維30%」という割合で構成されており[1]、非常に持久力に長けた筋肉であることが分かります。
トイレを我慢することができたり、骨盤内の臓器を支え続けられるのは、骨盤底筋に持久性が備わっているからこそ、成せる技なのです。


骨盤底筋は、横隔膜と協調することで腹腔内圧(IAP)を高めます。ご自身のカラダで考えてみましょう。みぞおちの高さにある横隔膜が“上蓋”、恥骨の高さにある骨盤底筋が“下蓋”です。骨盤底筋が弱い状態とは、言わば下蓋に穴が空いた状態であり、IAPが高まりにくい状態と言えます。
骨盤底筋が弱化する理由としては、
- 加齢
- 出産
- 肥満
- 猫背などの不良姿勢
- 慢性的な腹腔内圧の上昇
が挙げられます。
加齢や出産などは比較的イメージが付きやすいですが、肥満でも骨盤底筋は弱化します。体重が増加すると腹腔内圧が常に高まるため、骨盤底筋に継続的な負荷がかかり、弱化のリスクが高まります。[1・2]
猫背などの不良姿勢も、骨盤底筋の機能低下を引き起こします。特に、腰椎前弯の減少は内臓が骨盤底筋への垂直荷重を増加させるため、筋線維の伸長を引き起こし弱化を進行させます。[2]
慢性的な腹腔内圧の上昇の具体例として、「咳・くしゃみ・重い物の持ち上げ・激しい身体活動」が挙げられます。お腹に強い力が繰り返し加わることで、骨盤底筋に継続的なストレスがかかり、弱化につながることがあります。[2]
このように、骨盤底筋を弱化させる要因は多岐にわたります。次は、呼吸をすると骨盤底筋はどのように動くのかについて、動きの仕組みを図解付きで解説します。
呼吸すると骨盤底筋はどう動く?動きの仕組みを図で理解


骨盤底筋は、横隔膜の動きと連動しており腹腔内圧(IAP)を一定に保つ役割を果たします。
- 横隔膜:上蓋(うわぶた)
- 骨盤底筋:下蓋(したぶた)
だと考えてください。
息を吐くときや、力を入れるときを例に考えてみましょう。重い物を持ち上げる、咳・くしゃみといったお腹にぐっと力を入れるとき、私たちは自然と息を「吐きながら」動作を行っています。


このとき、上蓋の横隔膜は上へ動き、骨盤底筋はキュッと引き締まり上へ持ち上がります。横隔膜の上昇の動きに対して、「骨盤底筋がキュッと引き上がる」動きにより、腹腔内圧(IAP)が維持されます。
次に、息を吸う時について考えてみます。息を吸うと上蓋である横隔膜が下に押し下げられるため、自然と腹腔内圧(IAP)が上昇します。この時、骨盤底筋が下降することで過度な圧力を緩めます。


“骨盤底筋”は横隔膜と協調して動くことで、腹腔内圧(IAP)を一定に保つメカニズムが備わっています。協調して動くからこそ、腹圧を維持して腰の負担を軽減したり、骨盤底筋への過負荷を防いだりできるのです。
骨盤底筋を鍛えることで得られるメリットとは?


骨盤底筋を鍛えることで得られるメリットは以下の通りです。
- 尿失禁(尿もれ)を軽減する
- 骨盤臓器脱のリスク低減や進行抑制
- 便秘の症状が緩和する
- 体幹が安定して姿勢が良くなる
- 呼吸効率の向上
骨盤底筋を鍛えることで、尿失禁(尿もれ)、骨盤臓器脱、便秘の症状の改善、体幹が安定して姿勢が良くなる、呼吸効率が向上するなど多くのメリットが報告されています。[2・3]
これらの内容に思い当たる節がある方は、骨盤底筋をトレーニングすることをおすすめ致します。
産後の骨盤底筋ケアにおすすめ!腹式呼吸でできる簡単トレーニング
骨盤底筋を鍛えるときには、「骨盤底筋トレーニング×腹式呼吸」の組み合わせをおすすめします。骨盤底筋を鍛えるために、“お尻の穴をキュッと締めましょう。” そのように言われることも多いのではないでしょうか。
それ自体も効果的ではありますが、骨盤底筋をキュッと締めながら“腹式呼吸”を組み合わせると更に効果的です。
横隔膜と骨盤底筋は “筋膜”を通してつながりがあります。
- 息を吸うと、骨盤底筋は遠心性収縮
- 息を吐くと、骨盤底筋は求心性収縮
が発生し、腹腔内圧を維持・強化しています。“腹式呼吸を行うこと自体が、 骨盤底筋に適度な負荷をかける”ということが大切なポイントです。お尻の穴をキュッと閉めたまま、腹式呼吸を行うことで骨盤底筋をしっかり鍛えることができます。




その他にも「Cat&Cow」というエクササイズも、骨盤底筋を鍛えるセルフケアとしておすすめです。こちらは少し上級者向け。仰向けでのトレーニングができるようになってきたらトライしてみましょう。




身体を丸めたり反らしたりする動きが加わることで、骨盤底筋に適度な負荷がかかります。是非トライしてみてください。
まとめ
骨盤底筋とは、骨盤の底でハンモック状に横たわり、内臓や骨盤内臓器を下から支える筋肉群のことです。基本的な機能としては、
- 骨盤内臓器を“下支え”する
- 排泄のコントロール
- 腹腔内圧(IAP)を高める
といった作用があります。骨盤底筋を強化することにより、
- 尿失禁(尿もれ)を軽減する
- 骨盤臓器脱のリスク低減や進行抑制
- 便秘の症状が緩和する
- 体幹が安定して姿勢が良くなる
- 呼吸効率の向上
といった効果があることが、科学的にも証明されています。弱化する原因は多岐にわたりますが、読者の皆様も加齢や出産、猫背などの不良姿勢などによる原因で、骨盤底筋が弱化する可能性があります。思い当たる節がある方は、今日からトレーニングを始めてみましょう。
「産後から体型が戻らない…」「適切にトレーニングできているかわからない…」と感じる方は、Phys Roots Pilatesにご相談ください。理学療法士歴10年以上のピラティストレーナーが丁寧にサポートさせて頂きます。ここまでご覧頂きありがとうございました。
参考文献
1.ScienceDirect Topics. “Pelvic floor.” Veterinary Science and Veterinary Medicine. ScienceDirect. https://www.sciencedirect.com/topics/veterinary-science-and-veterinary-medicine/pelvic-floor2.Bordoni B, Sugumar K, Leslie SW. Anatomy, Abdomen and Pelvis, Pelvic Floor. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan–. Updated 2023 Jul 17. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482200/
3.ohnson A., Smith B. “Can you breathe yourself to a better pelvic floor? A systematic review.” Neurourology and Urodynamics. 2021;41(3):xxx–yyy.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1360859221002394