【“腹筋”で呼吸は変わる】ピラティス呼吸と“腹横筋”の大切な関係を紐解く

皆さんはこのように感じたことはありませんか?

呼吸を深めようと思っても息が吸えない…。

胸式呼吸を意識しても肋骨がうまく広がらない…。

呼吸って通常は無意識で行っているものなので、いざ意識しようとすると難しいものですよね。ピラティスでは、“肋骨を360°広げる呼吸”を行いますが、“腹筋にちょうどよい力が入っていない” ことが原因で、うまく呼吸できていないケースが散見されます。

そこで鍵になるのが腹横筋。ピラティス呼吸の要である横隔膜の動きを最大化させるためには、腹横筋に“強すぎず、弱すぎない力”を与えることが大切です。ピラティス呼吸とは、“お腹を薄くしたまま”肋骨を360°広げる呼吸法。お腹の力が入っていない、もしくは抜けている状態だとピラティス呼吸は行えません。

そこでこの記事では、ピラティス初心者の方に向けて『腹横筋の機能解剖』『腹横筋と横隔膜の関係性』『ピラティス呼吸を活性化させるお腹の使い方』『バスタオルを使ったピラティス呼吸法』まで包括的に解説致します。

『深い呼吸でスッキリしたい』『呼吸を深めて体の不調を軽くしたい』と考える方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

腹横筋の機能解剖と呼吸への関連性

〜腹横筋の起始停止と作用〜

【起始】
・第7〜12肋軟骨の内面
・腸骨の腸骨稜の内唇
・鼠径靭帯の外側部
・腸骨稜の内唇
・胸腰筋膜を介して腰椎の肋骨突起
【停止】
・腹直筋鞘を介して白線
【作用】
・第6〜12肋骨を引き下げる

参考図書:改定第2版 骨格筋の形と触察法 編集:河上敬介 磯貝香 P.143

腹横筋は、お腹まわりを広く包み込む“天然のコルセット”と言われており、腰まわりを安定させて腰痛を軽減する効果があります。一方で、呼吸機能にも大きく関わっていることが近年の研究で明らかになってきました。

坂本(2008)によると、横隔膜と腹横筋は筋膜を介して強く連結していることが示されており[]、Montes et al. (2016)の研究でも、息を吸うときには腹横筋の筋緊張が適度に弱まり、息を吐くときには腹横筋の筋緊張が強まると報告されています。[

これら複数の研究からも“腹横筋が呼吸と関連している”ことが理解できます。

この章における重要なポイントとして、

  • 腹横筋は呼吸機能と密接に関わる。
  • 腹横筋と横隔膜は筋膜を介してつながりがあり、
  • 腹横筋は息を吸うと緩み、息を吐くと収縮する。

これら3つのポイントをしっかり押さえておくことが大切。腹横筋を適切に働かせることができれば、呼吸を深めるために必要な“横隔膜を最大限に活性化”させることができます。

横隔膜が活性化することで、体幹が安定するため腰痛や肩こりが軽くなります。姿勢を整える第一歩となる、呼吸における最も重要な筋肉です。

横隔膜の詳細については、次の記事をお読み頂き、呼吸への理解を深めていただければと思います。

横隔膜と腹横筋の関係|呼吸と体幹をつなぐ仕組み

  • 息を吸うと横隔膜がちぢんで、腹横筋がゆるむ。
  • 息を吐くと横隔膜がゆるんで、腹横筋がちぢむ。

私達は1日に20,000回以上呼吸するなかで、常にこのような関係が成り立っています。

前提として、肋骨の広がりは“横隔膜がギュッとちぢむ”ことによって発生します。そのためには、腹横筋がお腹に“適切な張り”を提供することで、肋骨を広げる胸式呼吸ができます。胸式呼吸は、腰まわりを安定させ、姿勢や動きを整える第一歩。お腹を適切にコントロールできれば、ピラティス呼吸は簡単です。

以下の章では、お腹をしめすぎた場合とゆるめた場合の“呼吸の反応”について紐解いていきます。

腹筋(腹横筋)を締めすぎると呼吸は浅くなる

腹筋(腹横筋など)をギュッとしめすぎてしまうと、肋骨は広がることができずに呼吸は浅くなります。胸式呼吸を行なう上で、お腹を薄く保つことは非常に大切。ですが、お腹をしめすぎると肋骨の動きには制限がかかってしまうのです。

読者の皆様も試してみましょう。

  • 息を強く吐いて、お腹を“ガチッ”と固めます。
  • そのまま、肋骨を広げるように胸で呼吸を行ってみてください。

いかがでしょうか。肋骨を広げることができないですよね。深く呼吸したいなら、腹筋は強く締めすぎてはいけないのです。“腹筋の過剰な力”は肋骨の開く動きを邪魔してしまいます。

腹筋(腹横筋)をゆるめすぎると呼吸は浅くなる

一方で、腹筋(腹横筋など)の収縮がまったくない場合も、肋骨は広がらず呼吸が浅くなります。胸式呼吸を行なう上で、腹筋が抜けてしまうと“内臓が前方に移動”してしまいます。横隔膜が横方向に広がるためには、“内臓が横隔膜のテコ”になる必要があります。

読者の皆様もやってみましょう。

  • お腹を“ゆるゆるに脱力”しておきます。
  • そのまま、肋骨を広げるつもりで深呼吸してみましょう。

これもまた、肋骨を横に広げることができないですよね。お腹がどんどん膨らんでしまいます。適度な腹圧がかかっていないと“内臓が前方に移動”してしまい、内臓が横隔膜のテコとなることができないのが原因です。

呼吸を深めたいなら、腹筋は『強すぎず、弱すぎず。』の状態を作ることが大切です。

ピラティス呼吸で腹横筋と横隔膜をバランスよく働かせる方法

腹筋(腹横筋など)を“強すぎず、弱すぎず” 働かせることで横隔膜の働きが活性化して、呼吸を深めることができます。呼吸を深めることは、腰痛や肩こりを軽減し、慢性的な疲労感の緩和することにも役立ちます。

今回は、バスタオル1本でできる“ピラティス呼吸法について解説いたします。バスタオル“1つ”あるだけで呼吸を深めることができますので、是非トライしてみてください。

  • バスタオルを1枚準備する。
  • 仰向けで腰にバスタオルを差し込み、
  • 腰の自然なニュートラルを作りだす。
  • 背すじを伸ばし、お腹を薄く保ったまま、
  • 肋骨を抱えて深呼吸をおこなう

骨盤を立てたままの深呼吸でお腹が膨らむ場合には、タオルをギュッとつぶす意識を持つと、腹横筋と横隔膜をバランスよく働かせることができます。慣れてきたら、腰の自然なニュートラル姿勢で、深呼吸を再度行っていきましょう。

まとめ

私たち人間は、1日に20,000回以上呼吸していると言われています。呼吸は、酸素と二酸化炭素のガス交換だけでなく、腰痛や肩こりの緩和、姿勢を整える効果があると言われていますが、呼吸機能を高めるためには“腹横筋の適度な収縮”が必要です。

  • 腹筋(腹横筋)をしめすぎても呼吸は浅くなり、
  • 腹筋(腹横筋)をゆるめすぎても呼吸は浅くなります。

骨盤を立ててまっすぐな姿勢を維持するだけでも、呼吸機能を高めることができます。呼吸は立っていても、座ってても、寝ていても、どこでも練習できます。場所にとらわれずどこでもできるのが最大のメリットですね。

『気づいたときにちょっとやってみよう。』

これくらいの気楽な気持ちで行ってみるのが良いと思います。

『呼吸が浅くて困っている。』『腰痛や肩こり、慢性的な疲労に悩んでいる。』と感じるそんな方は、PHYS ROOTS PILATESへご相談ください。ピラティストレーナー歴7年以上の経験をもつ理学療法士が丁寧にご回答させていただきます。今なら、お体に関するオンライン相談も無料で行っております。ぜひご活用ください。

ここまでご覧いただきありがとうございました。

【参考図書】
改定第2版 骨格筋の形と触察法 編集 河上敬介 磯貝薫 大峰閣

【参考文献】
1.坂本 慎一. (2008). 横隔膜と腹横筋の筋膜的連結について. 理学療法学, 35(Suppl.), 212.
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205566128768
2.Montes, A. M., Cancelliero-Gaiad, K. M., Silva, C. A., Pantoni, C. B., & Lunardi, A. C. (2016). Abdominal muscle activation during inspiration with and without inspiratory load. Respiratory Physiology & Neurobiology, 228, 51–56.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1050641116300797

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