あなたはこのように感じることはありませんか。

胸式呼吸って言われても、全然胸が動かない…



息を吸うとお腹まわりがふくらんでしまう。
ピラティスを始めたばかりの方から、このようなお悩みをよくいただきます。胸式呼吸はなんとなくイメージできるけど、実際にやってみようとすると“非常に難しい”呼吸方法ですよね。肋骨の動かし方や意識の向け方に混乱してしまう方も数多くいらっしゃいます。
私自身もピラティスを継続していく中で試行錯誤しながら、呼吸の仕方について学び、実践してきました。そこでこの記事では、理学療法士として10年以上、姿勢や呼吸を指導してきた経験をもとに、胸式呼吸のやり方や効果、感覚のつかみ方をわかりやすく解説します。
「ピラティス呼吸がこういうものなのか!」と実感して頂き、あなたの毎日に取り入れるきっかけになれば幸いです。
【基礎解説】ピラティス呼吸とは?ピラティス呼吸で押さえるべき“2つ”の筋肉
ピラティス呼吸は「胸式ラテラル呼吸」とも言われており、「肋骨を樽のように膨らませながら、お腹は薄く保つ」呼吸方法です。ピラティス呼吸を行う上で、次の2つの筋肉を理解しておくと、動かし方が頭の中でイメージしやすくなります。
- 横隔膜
- 腹横筋
上記2つの筋肉がなぜ大切なのか。1つずつ深堀りしながら解説していきます。


ピラティス呼吸において横隔膜の理解は必要不可欠です。横隔膜は、呼吸において60〜80%の仕事量を担っています。また、「下方・前後・左右」の3方向すべての動きを引き出すことが可能であり、呼吸において貢献度の高い筋肉となります。
呼吸を行う際には、横隔膜の動きを意識することが大切です。上記の図が頭の片隅に入っているだけでも、呼吸のイメージが自然と湧いてくるはず。ピラティス呼吸を行うとき、“肋骨を樽のように広げる”感覚を持つことで横隔膜の動きを最大限に引き出していきましょう。


ピラティスを行うときは“お腹を細く保ち続けること”が大切。腹横筋は「コルセット筋」ともいわれ、腰まわりを安定させる効果があり、腰まわりが安定することによって胸や肩、股関節を動かしやすくなります。
胸腰筋膜とは、“背中からお腹を覆う膜”を指します。腹横筋は胸腰筋膜とつながっており、腹横筋の収縮を介して胸腰筋膜に張りが生まれ、腰椎が安定します。ピラティスにはダイナミックな動きも多いため、「お腹を細く保つこと」を意識しましょう。
ピラティス呼吸で得られる5つの効果


ピラティス呼吸で得られる効果は次の5つです。
- 猫背・巻き肩などの不良姿勢が整う
- 首や肩まわりの緊張が和らぐ
- 体幹の安定により腰の負担が軽減する
- 血流改善によるリフレッシュ効果
- 心肺機能が高まり疲れにくくなる
ピラティス呼吸は、「肋骨を樽のように膨らませながら、お腹は薄く保つ」呼吸方法です。ピラティス呼吸を行うことで、自然と“お腹が強化され、胸まわりが柔らかく”なり、猫背や反り腰などの不良姿勢が整いやすくなります。それに伴い、首や肩まわりの緊張も軽くなるのが特徴的です。
お腹を細く保つことは、体幹のインナーマッスルを活性化し、腰部負担の軽減に役立ちます。ピラティス呼吸を意識して運動を行うことで、血液の流れが良くなり[1]、体全体がリフレッシュした感覚を味わうことができます。 また、心肺機能を高める効果も確認されており[2]、息切れしやすい方にとってもおすすめです。
ピラティス初心者でもできる!ピラティス呼吸の正しいやり方3ステップ
ピラティス呼吸をエクササイズに組み込む具体例
「息を吐きながら動くの?それとも、吸いながら動くの?」とお客様からよく質問をいただきます。
結論としては、
- 反らすときは息を吸いながら動く
- 丸めるときは息を吐きながら動く
- 捻じるときはどちらでもOK
もちろん、お客様のお身体の状況やエクササイズによっては、同じエクササイズでも息を吐きながら動いたほうが良い場合と、息を吸いながら動いたほうが良い場合があります。しかし、「息を吸う=体は反る方向に動く」「息を吐く=体は丸まる方向に動く」というメカニズムがあります。
動きを最大化するという目的においては、この原則に則りエクササイズを行うことが大切です。
具体例を挙げて解説していきます。まずは「スワン」というエクササイズ。


うつ伏せになり息を吸って準備。息を吐きながら体を伸ばしていきます。「スワン」では息を吸いながら動くことで胸椎の動きを促していきます。しかし、腰が反りすぎて腰痛が起こる方の場合には、息を吐きながら動くほうが最適な場合もあるので注意が必要です。
続いて、「Chest Lift」というエクササイズ。


息を吸って準備。息を吐きながら体を丸めます。「Chest Lift」では、息を吐きながら動くことで背骨全体をしっかりと丸めることができます。息を吸いながら動いてしまうと、体が反る方向へ引っ張られてしまうので、体を丸めて腹筋を鍛えたいと考える方にとっては非効率です。
最後に、「Spine Twist」というエクササイズ。


「Spine Twist」というエクササイズでは、あなたが何を目的にするかで「息を吸いながら動くのか、息を吐きながら動くのか」を決めていただくと良いでしょう。息を吸いながら動くことで、“背すじが伸びて背骨を捻じるのが楽”に行えるようになります。
一方で、息を吸いながら動くと腰が反ってしまい、胸椎の動きが出ない方にとっては、息を吐きながら動くほうが胸椎の動きを最大限に引き出すことができます。
まとめ
ピラティス呼吸とは、「胸式ラテラル呼吸」とも言われる呼吸方法で、「肋骨を樽のように膨らませながら、お腹は薄く保つ」呼吸方法です。ピラティス呼吸を行う際には「横隔膜」や「腹横筋」の2点をイメージしながら呼吸を行っていきましょう。
ピラティス呼吸を行うメリットとして次の5つが挙げられます。
- 猫背・巻き肩などの不良姿勢が整う
- 首や肩まわりの緊張が和らぐ
- 体幹の安定により腰の負担が軽減する
- 血流改善によるリフレッシュ効果
- 心肺機能が高まり疲れにくくなる
これら5つの効果がありますので、ぜひ皆さんも今日から実践してみましょう。呼吸は1日に20,000回前後も行っていると言われています。立っているついでに、寝ているついでに。「気がついたときに軽くやってみる」そんなスタンスでちょうどよいと思います。
息を吸いながら動くのか。息を吐きながら動くのか。あなたのお身体の状況に合わせて呼吸方法を最適化させていくことも大切な要素です。まずは、実際に試してみて、体にどんな反応を感じるかを探求してみても面白いと思います。
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ここまでご覧いただき、ありがとうございました。
【参考文献】
1.Woramontri C et al. Effect of Mat Pilates Training on Blood Pressure, Inflammatory, and Oxidative Profiles in Hypertensive Elderly. Sports. 2024;12(5):120.
doi: 10.3390/sports120501202.Fernández-Rodríguez R et al. Pilates Method Improves Cardiorespiratory Fitness: A Systematic Review and Meta-Analysis. J. Clin. Med. 2019;8(11):1761.
doi: 10.3390/jcm8111761